Ken教授の
Rhythmic Serve_PRO ( リズミック・サーブ_プロ)
弓野憲一( [教育学博士] 静岡大学名誉教授/弓野教育研究所所長)
<リズミック・サーブ_プロの開発方針>
1. リズミックなテニスサーブを促進する
上級者は、手・足・体を協調させてリズミックにサーブを打つ。サーブの遂行に安 定した一定のリズムがあるのである。 このリズミックな打球過程を通じて上級者は、相手コートのねらった位置の近傍にサーブ を集中させている。これに対して、初級者のサーブはぎこちなく、一定のリズムが見られない。トスが高すぎたり、低すぎたり、不適切な位置に落下したりして安定したリズムが刻めないからである。当然のことながら、ボールがコート上の広い範囲にまき散らされる。このアプリは、中・上級プレイヤーおよびプロが、ねらったところにサーブが「入った/入らなかった」のみに一喜一憂するのではなく、「構えて」から「打球」するまでの反応時間を「1/100秒刻み」で知ることにより、リズミックなサーブが出来ているかどうかを「数値で確認」できるように新たに開発された。もちろん 入門者・初級者も安定したサーブ技術を獲得するために使用することができる。
2.大別するとテニス・サーブは5つの動作で構成される
サーブのフォームや打ち方は、プレイヤー毎に異なる。しかし、つぶさに観察すると、次の5つの動作が含まれている。オーソドックスな右利きのプレイヤーを例にとろう。[1]体の前で、ラケットとボールを近づけて保持する。[2]ボールを保持した左手は大 きく動かさずに、ラケットを持った右手を体に近づける。[3]左手で支えたボールをトスする。[4]体を後ろ方向に弓形に反らせつつ、脇を大きく開いて、右手に持ったラケットの先が背中に届くほど引く。[5]体の反動と協調させて、ラケットを上にのばし、手首のスナップを効かせて強くボールを叩く。
3. このアプリは毎回1/100秒単位で反応時間を計測して、その場でプレヤーに知らせる
このアプリは、サーブを開始するときにプレヤーが「Go」と発声し、ここから反応時間の測定が開始される。そして、ラケットにボールが当たる瞬間までの反応時間を1/100秒の精度で計測する。毎回の反応時間を、正確にコントロールできたサーブの反応時間と比較することによって、プレヤーはトスや一連の動作がリズミックに遂行できたかどうかを判定できる。
4. 反応時間の散らばり(SD: 標準偏差)を計算する
テニスでは、ねらったところに正確にサーブを入れることが大切である。このアプリでは、設定した試行回数が終わった時点で、全ての反応時間を画面に打ち出し、反応時間の散らばり(標準偏差)を計算する。標準偏差は、サーブスキルの上達に伴 って、確実に小さくなる。それゆえ、この値を記録することによって、サーブスキルの上達を正確に知ることができる。
<リズミック・サーブ_プロの使用方法>
0. WiFiおよびあなたが走らせている全てアプリを止める
1. トップ画面には3つのボタンがある
[1] USAGE(使用方法): 最初に使用方法を読む。
[2]
SETTING(設定): 練習回数、次の試行開始までの待ち時間(間隔時間)が、設定できる。
[3] FINISH(終了) アプリを終了する。
2. 「開始(Start)/再開(Restart)ボタン」を押すと、”ブザー音”が鳴り、続いて"ピー音"が鳴る。ここでプレイヤーは"Go"と発し、その試行を開始する。
3.設定画面(Setting Screen)
[1] Number of Trials(サーブの練習回数)
[2] Interval(
Ballを”Hit” してから次の試行開始までの待ち時間)
[3] Get Balls/ x-Trials: サーブ用のボールを補給する試行数: 選んだx-試行毎に、“getBalls”と告げられる。
[4] 設定が終わったら、Start(開始)ボタンを押す。
4.反応時間測定画面(Reaction Time Measuring Screen)
1)反応時間(Reaction Time)
このアプリでは、プレヤーが発した”Go”から、ラケットがボールを”Hit”するまでの時間が反応時間として、1/100秒精度で測定される。同一場所をめがけたサーブ練習において、この反応時間を安定させることが、サーブ成功の確率を高める。
2)反応時間の計測
反応時間の計測が始まると、画面の上部にオレンジ色で、「試行回数/全試行回数」、「反応時間」が表示される。そして反応時間が発音される。
3) "Get Balls" の後に、ボールの準備できたら、"再開ボタン(Restart)"を押す。
4)設定した「試行回数」に達したら、 全ての反応時間と反応時間の散らばりを表す[標準偏差:SD]が画面にPRINTされる。サーブの上達に伴って、標準偏差は小さくなる。試行回数が十分大きくなると、反応時間の平均値プラスマイナス標準偏差の範囲に、全ての反応時間の約60%が入る。SDは、サーブの安定度に関しての鋭い指標である。毎回練習後にグラフにすると、サーブの安定度の進歩が確認できる。
5. 反応時間データの記憶と送付
反応時間は、スマホの内部記憶(Inner Storage)の「ドキュメント_フォルダー: Document」に日時の付いたファイルとして記憶される。 EsExploror(無料)等を使って、不要なものは削除するといい。
"RhyMail_PROアプリ"には、メイル機能がついており、gmailの添付ファイルとして、このデータをパソコンに取り込んで、整理することができる。これには、Google
アカントのセキュティをゆるくする必要がある。Google アカウント内の「ログインとセキュリティ」ページで、「安全性の低いアプリの許可」を「有効」にするとこれが可能になる。
<リズミック・サーブ_プロの要点>
テニスサーブのフォームややり方は人によって異なる。構えてから打球までの一連の動作やリズムには、その人特有のものがある。しかし、人によって異なる動作やリズムであっても、安定した正確なサーブを実現しようとすると、次に述べる6つの動作への配慮を欠かすことができない。右利きのプレイヤーを例にとって説明しよう。
1.サーブを成功させるには、6つの動作に注目する必要がある
1)一番目の動作: トスの際のボールの保持方法
ボールをどのように保持し、トスするかについては、a) 手のひらにのせたり、b)5本の指で軽くつまんでトスしたりする方法と、 c)中指(/ 薬指)の上に乗せ、親指と人差し指で囲んで保持して、トスする方法等がある。初心者はc)の方法が向いている。図1を参照されたい。
図1. ボールの保持方法
ただし、c)の方法は、手首と指があまり使えないので、適切な位置にボールを届かすために、それのみを繰り返し練習する必 要がある。乾杯の際に、グラスを高い位置にあげる要領である。膝を折り曲げてボールを腰より低く下げ、その反動でボールを 高く上げようとする動作が初心者に見られることがあるが、こうするとトスが安定しない。
2)二番目の動作: 左右の足を、少し開いて、ラケットとボールを体の前で軽く接触させ、サーブを開始する準備ができた状態(”Ready”という語で代表させる)。大切なことは、重心が幾分左足に置かれ、肩のみならず全身の力がほどよく抜け、心もリラックスしていることである。図2を参照されたい。
図2 “Ready”の動作
3)三番目の動作: 重心を右足に移しながら、ボールをもった左手はほとんど動かさないで、ラケットを体に近づけつつ右下に動 かす動作(”One”という語で代表させる)。ラケットが止まる直前にグリップを強く握りしめ、直ちに力を抜く。初心者は、ラケット のヘッドを大きく下に移動させずに、手首を返してラケットの面を水平に近づけるといい。ここでつくった面は、そのまま頭上で打球する際の面になるからである。図3のオレンジ色の円内を参照されたい。左手はほとんど動かさないで、右手のみを動かし、力を入れて抜く。これらを繰り返し練習することで、左右の手を、別々にコントロールできるようになる。すなわち、正確なサーブを実施する上で必須のリズムが獲得されるのである。
図3 “One”の動作
4)四番目の動作: 左手でトスを開始する動作(”Two”という語で代表させる)。図4を参照されたい。ここで大切なのは、左 手のトスの動きに引きずられて、右手のラケットを同時に動かさないことである。トスとラケットを同時に動かすと、ラケットの動 きに引きずられて、トスが後方に流れて打点が後方になってしまい、強くて正確なサーブを打つことが困難になる。トスの開始から少し遅れて、ラケットの振り上げを開始することが大切である。トスが適切な位置にあがったかどうかの判断は、落下してき たボールが、手から放れた位置で受け取れれば、成功である。
図4 “Two”の動作
5)五番目の動作: 両方の足を少し前に折り曲げながら、ラケットを素早く振り上げて、背中にかつぐ動作(”Three“という語 で代表させる)。中・上級プレイヤーは、ラケットの動きと連動させて、身体を弓なりにそらす練習をすることが必要である。しかし入門者には、弓なりに反らす練習を、サーブスキルがある程度上達した後に始めることを勧めます。 ボールのトスから少し遅れて、二番目の動作でつくった手首を緩めないで(図3参照)、素早くラケットを背中に担ぐ。その際、腕と体の角度が90度になるようにす ると、強く振り下ろすことができる。図5を参照されたい。
図5 “Three”の動作
6)六番目の動作: トスされたボールを叩く動作("Hit"という語で代表させる )。図6を参照されたい。
打球の際には、手首を緩めないで腕を上に伸ばし、続いて、体の反り返りからの回復と同期させながら、腕全体をひねりつつ、瞬 時に手首を返して落下しつつあるボールを強く叩く。ラケットの面が少し上に向いて、ボールに当たる。初心者は、ラケットのヘッ ドスピードが遅いので、この角度が大きくなる。サーブのスピードを上げるためには、ボールを使わないで、Hitの直前にラケット 素早く立て、振り下ろす練習が有効である。サーブがかなりの確率で相手コートに入るようになったプレイヤーは、打球の位置 をラケットの中心から、少し上にする練習を勧める。こうすると、速いサーブを打つことが可能になる。
図6 Hitの動作
<リズムをつけて6つの動作をつなぐ>
正確で安定した「サーブ」を獲得するためには、各動作に注目して、それぞれの動作の練習を個別に繰り返し、それぞれの動 作が有る程度安定した後に、6つの動作をリズミックにつなぎ合わせるといい。