日本および世界の先進国が求めている課題設定・解決能力

2015年時点で世界の先進国および文科省が求めている「教育」および「子どもの力」は、およそ以下のものである。

 @ある事柄に関する知識の伝達だけに偏らず,学ぶことと社会とのつながりをより意識した教育である。
 A子どもたちはそうした教育のプロセスを通じて,基礎的な知識・技能を習得する。
 Bそして,実社会や実生活の中でそれらを活用しながら,
自ら課題を発見し,その解決に向けて主体的・協働的に探究し,学びの成果等を表現し,更に実践に生かしていけるような力を育てる(課題設定・解決能力とよぶことにしよう)。
 

課題設定・解決能力と創造性

  学びが強調される日本の社会や学校では、課題設定を上司や教授・教師が行い、部下や学生・生徒がそれを解決するというスタイルが一般的である。しかし、インタネットの中に膨大な知識・情報・解決方法等が蓄積され、スマホやPCによって瞬時にそれらを手に入れることが可能になった現在、大切なのは課題解決方法に長けることではなく、有効な課題設定が行える能力を身につけることである。それも、自分、相手、集団、組織、社会等の各種の状況を考慮に入れつつ、「有意味で価値のある課題設定ができる能力」を伸ばすことが肝要である。有意味で価値のある課題は、完成された形で砂に埋もれてはいなくて、自らが積極的に関与しつつ議論を重ね更に失敗を乗り越えて、それを「設定」する必要がある。それは完成された形で見い出されたり、発見できるわけではないのである。この有意味で価値のある課題の設定力は、言うまでもなく「創造性の中核」に位置する。


NPO法人しずおか環境教育研究会(EcoEdu)の実践 









 森の中での自主的な課題設定・解決経験を重ねて子どもたちの「創造性が大きく伸びた

 1. 創造性テスト

創造性は課題(問題)を解決するためのアイデアを考え、それを試して、最終的に価値のある新しい何らかの「産物: 所産」を生み出す能力である。このような能力を測ることは容易ではないが、多くのアイデアを考え出す能力を測る「創造性テスト」は開発されている。「新聞紙の利用方法」、「空き缶の普通でない利用方法」、「楽しく遊べる熊の縫いぐるみの改良」、「人間が空を自由に飛べたら何が起きるか」、等々に関して、多くの優れたアイデアを考えださせるのである。

2.研究の方法

本研究では,小学校低学年向け環境教育における創造性の変容を定量的に評価するため,質問紙を用いて調査を行うこととした。
概要は以下の通りである。

1)調査対象:NPO法人しずおか環境教育研究会で主催している環境教育プログラムのうち,毎週一回・通年で実施している「里山そとアソビ塾」に参加する12名を調査対象とした。12名の内訳は,小学校2年生6名,3年生3名,4年生1名,5年生2名,うち男児5名,女児7名である。

2)調査時期:20134月のプログラム開始時(事前)と3ヶ月後の20137月(事後)の計2回において質問紙調査を実施した。

3)創造性の評価方法:創造性を評価するため,トーランスの創造的思考テストを参考に,3問の記述式問題に回答させた。内容は,@空き缶の使い道を考える問題,Aピエロが水に映った絵を見て質問を考える問題,Bピエロが水に映った絵を見て原因を考える問題の3問である。


 

 創造性の伸長を図1に示している。  森の中での自主的な課題設定・課題解決等の経験を通じて、子どもたちの創造性は大きく伸びた。

 


     1 創造性の伸長

(論文) 創造性の観点から見た環境教育プログラムの定量的評価の試み
(日本創造学会発表論文集2013)